5月 052020
 

合唱団にも盛衰というものがある。「団勢」・・・そういう言葉があるかどうか知らないが、確かに団員数が増えていく時期は、これに比例し声量も増してゆくことで合唱全体のダイナミックレンジも拡がる。それに伴い、音楽表現にも幅が出てきて、対応しうるレパートリーにも選択の余地が出てくる。今回振り返る第5回演奏会・・・ちょうど10年前はそんな時期に差し掛かっていたと思う。

前回エントリの「チャイコ」を第1ステージに配した本演奏会は、創立20周年を記念するイベントでもあり、チャレンジ精神や冒険心に満ち、一方で野心にも燃えながら我々は一段上の高みを目指していたのだ。そんな中最終ステージとして編まれたのはミュージカルを原曲とした掲題曲集!既にロシア語「チャイコ」に、持てるリソースの大部分を割く状況下で、しかも伝統的に英語に弱い当団は、この曲集に相当苦戦を強いられたのだった。ましてや、振り付け!?

果たして、ステージはヘトヘトの中進行され、技術的にも粗雑で合唱としての一体感を欠く印象が強いというのが正直なところ。しかし、体力気力を磨り減らしながらもたどり着いた場所から見た眺望は、その後のメンバー達の人生に大きな影響を与えただろう。様々な稚拙さから演奏内容は心許ない面もあるが、小団にとっては意義深い一曲でもあったのだ。

それでは、”It’s Broadway Musical” お聴き下さい。題名は正確には偽りを含んでおりまして、あいにく動画ではございませんのでご了承の程。(いつもの事ながらヘッドホン推奨)

※曲目データ
前橋男声合唱団・第5回演奏会
2009年11月28日 於:前橋市民文化会館
指揮:中曽根敦子 ピアノ:上原良子

1.Begin The Beguine(0:27
2.Night And Day(
4:17
3.Oklahoma!(
7:36
4.Memory(
11:08
5.The Impossible Dream(
15:19

 ( )内はラップタイム

※メンバーデータ
Top Tenor : 飯島研史、大友俊明、川原明弘、佐藤俊介、佐藤喜仁
Second Tenor : 岡 信和、佐藤大悟、佐藤営紀、善田顕理、槻岡一正、吉田 唯
Baritone : 伊藤裕司、木暮亮太、酒井 洋、中川 哲、中森浩太、宮島邦夫
Bass : 上原貢雄、栗田正之、後閑寛生、田村太作、都丸臧雄、前田真樹、山岸 晃、湯浅貴夫

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2016年の年内練習を打ち上げ

 合唱組織論, 練習日誌  2016年の年内練習を打ち上げ はコメントを受け付けていません
12月 242016
 

最終練習後、中曽根先生のご厚意により、ビールで乾杯!

2016年12月17日(土)。この日が小団の年内練習の歌い納めとなった。年末の多忙の折、あいにく練習に参加できない団員も多かったが、年初から取り組んできた「雪明りの路」全曲をさらった。

10月の群馬県合唱祭に載せた「梅ちゃん」「雪夜」は、今秋に集中的に取り組んだこともあり、さすがに別格であったけれども、他の四曲は、アンサンブル機会が比較的少なく、まだまだ音楽の骨格自体が弱含み。年明けから、さらに引き締めて臨まなくては!

さて、早いもので、2016年(平成28年)も暮れようとしている・・・。この1年は、自前演奏会の谷間の年であったこともあり、演奏機会には乏しかったものの、良い意味で「内向き」の一年として、着実に歩みを進めて来られたように感じている。

個人的な力量も、団としてのアンサンブル力や復元力、そしてバランス感覚など、過去のどの時期よりも充実してきているのは間違いないところだ。(もちろん、あくまでも相対的な話ではあるが)しかし、実働団員数自体、ここ5年の間、少しずつ減り続けており、新規の団員加入も、以前に比べれば鈍化している状況である。

技術力のアップが、すなわち、いわゆる敷居の高さにつながることで、以前のような加入ラッシュにつながらない一因となっているとの見方もあり、一定の説得力をもってはいるが、必ずしもそれだけとは限らない。

むしろ、第一義的には、裾野を広げるための不断の努力が足りなかったのではないか、いつしか、SNS頼り一辺倒となり、新団員とは自然発生するものだと勘違いを犯していなかったか・・・。ここの検証を怠ってはならないのだと強く感じているところだ。そして、団の現在の姿を客観的に分析し、次につなげていくことが出来なければ、我々の目指す持続的な合唱ライフの充実など、覚束ないだろう。

ともかくは、この一年、団員みんながそれぞれ楽しく、男声合唱ライフを満喫できたこと、まずもって一安心といったところである。

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年明けには年男となる佐藤氏により、一年の締めを・・・

   

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合唱の愉しみと忍耐(その2)

 合唱組織論, 日記・コラム・つぶやき, 音楽論  合唱の愉しみと忍耐(その2) はコメントを受け付けていません
8月 242014
 

前回=「合唱の愉しみと忍耐(その1)」からの続き)

構成する団員個人だけでなく、入団してくる団員の性質も、20数年間在団してみて、その時代時代の影響を強く受けてきたことを、実感します。(単に私が年寄りであることを告白しちゃってるだけかも知れませんが)

サイトというものは、本家ホームページにせよ拙ブログにせよ、小団の合唱団の内部情報をいろんな角度で提供しつつも、その実、入団を希望する方を、事前にフィルタにかけていると、そう言っても言い過ぎではないでしょう。

ですから、入団時に、その新団員のお方は、小団の活動内容をかなり把握してらっしゃる場合が多いです。

事前情報の中で、図らずも小団について何かを感じたからこそ興味を持ち、わざわざ練習見学においでになり、実物の練習を目の当たりにしてみたいと思い立つ・・・、そして、期待が確信に変わって入団に至る、というケースがほとんどでしょう。

確かに、広報・勧誘マネージャーとしては、オリエンテーションが一部省けて助かります。

しかし、そんな中で、私が特に気になっているのは、男声合唱の愉しみについて、もっとお気楽お手軽に得られるのではないかと、そう考えてらっしゃるのではないかと思われる方の増加です。

もう少々一般化して言えば、合唱を純粋な消費の対象として考えてらっしゃる方の増加とでも申しましょうか。その傾向は、肌身をもって私が感じてきたものです。

先回エントリでも記したように、自分が欲しいと思ったときに手軽に何でも手に入る時代です。同じ感覚で男声合唱の愉しみを求める者がいても、おかしくはないかも知れません。

合唱団のカラーにもよりますが、少なくとも、我々「まえだん」は、とにかく何から何でも楽しくというよりは、何と言っても指揮者の音楽観の影響が大きいのですが、音楽の厳しさや、集団の規律の中に真の愉しみを見出してゆくスタンス・・・(もしかしたら、うまく表現できていないかも知れませんが)そういう方向性を持っていると言えると思っています。

ですから、我々の練習成果を即、大きな感動として得ることは難しいです。

新団員の入団当初は不慣れな環境で刺激も大きく、暇を持て余すこともないわけですが、しばらく継続するストイックな練習の連続の中で、想定していた利益を得られず、逆にストレスが溜まってゆくことが常態化することだってあり得るわけで。

すなわち、短期間で投資を回収することはほぼ不可能だということなのです。

そのような現実に直面し、団としては、団員の継戦意欲を削がないよう、いろんな仕掛けを用意していますが、消費志向が強いメンバーは、それでも結構したたかで利にはさといのです。

ご本人の基準による費用対効果分析で割に合わないと判断すれば、一年足らずで(時には数ヶ月で!)退団を選択してしまいます。

そういった消費志向の強い団員・・・・言い換えれば、手っ取り早く合唱で感動したい団員・・・。私が入団して以来二十ウン年以上、全ての新団員との関わりを持ってきた中で、そういう方との出会いが多くなっているのを肌で感じております次第。

本年年初に起きた「偽ベートーベン事件?」などは、(覚えていらっしゃいますか?)消費者層の性向が、まさに「手っ取り早い」方向に向かって、徐々に変化しつつあることを裏付けているのではないでしょうか。

それは、閉鎖的と思われていた合唱界も決して例外ではないことが、やがて、違う形で我々の周りに顕在化する時が訪れるかも知れません。

「消費社会では、モノではなく物語が消費されます。ほとんどのひとはクラシック音楽に興味があるわけではなく、手っ取り早く感動を手に入れたいのです。」
(ハフィントンポスト「現代のベートーベンは自分マーケティングの天才」:2014年2月24日付より)

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一年間ありがとうございました

 合唱組織論, 年末年始, 日記・コラム・つぶやき  一年間ありがとうございました はコメントを受け付けていません
12月 312013
 

2013年(平成25年)が暮れてゆきます。

今年はなんといっても、小団最大のイベントである第7回演奏会を、どうにか無事開催できましたこと、あらためて、心より御礼申し上げます。

2007年(平成19年)の第4回演奏会から団員増とともに活動も安定し、隔年で自前演奏会を定期的に開催することが可能となりました。名実ともに、本格的男声合唱団に向けて一歩を踏み出した気がしております。

しかし、決して合唱風土が肥沃とは言えないここ群馬の地に根ざす限り、人材の枯渇の恐怖に対し、常に怯えているというのが本音です。ですので、来年も貪欲に、新団員を求める活動に注力して参ります。

小団には、大学等の専門機関で音楽教育を受けたメンバーは皆無です。そんな中、試行錯誤しながら行きつ戻りつを繰り返し、(おそらく熟練者から見れば無駄な時間を一部過ごしているかも知れません)中曽根先生を中心に、音楽の楽しさと厳しさを糧にしながら、男声合唱にいそしむ毎日を送っています。

あなたも、そんな手作りの音楽集団に参画してみませんか?少しでも興味のある方は、ぜひ、見学においで下さいませ。

いよいよ、年が明けると、小団は創立25周年の年を迎えることとなります。創立以来、紆余曲折を経たこの合唱団が25年以上も続くとは、創立に関わったメンバー達(ほとんどが退団)は想定していなかったでしょう。

顔もよく知らない彼らですが、確かに私達は受け継ぎ、ここまで走ってきました。そして私達はまた若い世代に男声合唱の火をリレーしてゆくのです。こうやって、群馬の地で、前橋の地で、血がたぎるような男声合唱を響かせてゆきたい!そう強く思う年の瀬です。

 

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合唱の愉しみと忍耐(その1)

 合唱組織論, 日記・コラム・つぶやき, 音楽論  合唱の愉しみと忍耐(その1) はコメントを受け付けていません
12月 302013
 

筆者がこの前橋男声合唱団のマネジメントに関わるようになって、もう20年近くが過ぎようとしています。
 
この間、インターネットというものが一般的となり、合唱団運営にかかるマネジメントの省力化が大いに進みました。

なかでも、情報の共有化、ペーパーレス化は著しく、今や、団員への事務連絡など、メーリングリストへの配信だけで済みますし、誰もが同じ演奏音源や音取り音源を手にできるようになりました。

構成する団員も大きく変わりました。創立時に在団したメンバーは今となっては、たった一人しかおりません。(その方も、常時活動していたわけではなく、大半は活動を休止していました)たとえ一時期でも在団したメンバーは、のべ50名以上にのぼります。 

しかし、変わっていないもの・・・。それは、合唱をするためには、普段は違った環境に生きる団員達が、個々人の予定をやり繰りしながら三々五々集い、一つの場所で共通の時間を過ごさねばならないという一事・・・。これだけは不変です。

今や、欲しい物があれば、ネットでポチッとすれば、翌日には自宅に配達されて、手に入ってしまうご時世です。なんと気楽なことでしょうか。従来叶わぬ夢であったと思われたことが現実化しつつあります。 

その勢いで、「合唱の愉しみ」もポチッとできれば良いのですが、それを手に入れることができるのは、多くの努力と数々の苦難を乗り越えた者(合唱団)だけのはずです。

音楽は、決して「楽しい」ものであるとは限りません。(もちろん、楽しいに越したことはないですが)ましてや、決して「楽」なものではないのです。

(その2)へ続く

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演奏会本番当日の空気というもの(その2)

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11月 072013
 

(「その1」からの続き)

したがって、団の執行部は、当日の団内環境の暖め方という観点において、その日特有のイベントを利用して、良質な空気を醸成すべく、しっかりした戦術を手の内に持っていなくてはならないと思う。

もちろん、本番演奏の時に最大限の力を発揮できるよう設計されて然るべきだが、小団のように二年おきに自前演奏会を開催している音楽集団では、構成するメンバーもその都度変わり、毎回同じ技術的レベルであるとは限らないし、テンションの誘導にはいろいろ難儀してしまう。それに、いつも同じ暖め方では、古参の団員には効かなくなってしまうだろうし。

しかし、小団の手法として毎回の演奏会で必ず繰り返しているもの、なぁんだ、そんなのウチもやってらぁ!とおっしゃるかも知れないが、それは、「タイムテーブルの遵守」である。

小団では、本番機会ではタイムテーブルを必ず作成することになっている。会場の大小、お客様の多寡、有料演奏会か否か等は一切関係ない。

これには、団員の全ての行動が分刻みで記述されている。団員はこれを参照しながら、練習をしたり、限られた時間で弁当をかきこんだり、はたまた、受付を設営したり、パンフレットにアンケートを挟み込んだりする。

直前のステージ練習の時間も、きっちりタイムキープされる。余程の事情がない限り、指揮者からの延長要請も却下されるのが常だ。

この時点で、時間厳守に固執するタイムキーパーと化したステマネは、嘲笑の対象と成り果てる事もあるかも知れない。しかし、それでいいのだと思っている。

そうやって、テキパキと集団で行動しているうちに、団員の中にリズムが作られ、それが全体のリズムとなってゆく。その果てには、ステージで合唱団として奏でるリズムへと昇華され、お客様の心の中に我々の演奏がリズムとなって刻み込まれるのだと信じているから。

そのリズムは、とうの以前から奏でられ始めているのかも知れない。団として構成する団員は集まり散ずることは常であり、毎回の演奏会にオンステするメンバーは異なりこそすれ、前橋男声合唱団の日常のリズムがこそが、本番のリズムを形作っていることだけは真実である。

長々と観念的に、合唱団全体のテンションについて話をしてきたが、実のところ、テンションが高ければ、それが果たされるのかどうかは不明な部分もある。気持ちが高ぶりすぎて、致命的なミスに変わってしまう場合だって想定される。当然、前述の「暖め方」は「鎮め方」と言い換えても当てはまる論理であろう。つまるところは、バランスコントロールなのであろう。

段取り八割とはよく言ったものだが、前日までに七割九分を終えているとすれば、最後の一分を、当日のこういった作業をもって仕上げることとしたいものである。

「朗らかな楽しい雰囲気は、行き届いた規律の中からのみ生まれる」
(「合唱事典」〜音楽之友社)

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演奏会本番当日の空気というもの(その1)

 合唱組織論, 日記・コラム・つぶやき, 演奏会マネジメント  演奏会本番当日の空気というもの(その1) はコメントを受け付けていません
11月 062013
 

KYなどという言葉が世の中を席巻し、他人とのコミュニケーションにおける様々な場面で、空気の重要性がクローズアップされ、時には空気を読めない人を非難するという、それこそそんな空気は、今もこの日本中を覆っているように思えてならない。

KYについての議論は別途行うものとしても、合唱演奏会本番当日の空気というのは、いやはや本当に水物なのである。

いくら、ストイックで堅実な練習を積んできて、演奏が見事に成功すると思われても、本番当日、何か些細な物事をきっかけに、それは恐ろしいほど、天と地・・・、いや水と油ほど演奏そのものが変わってしまうものだ。

それは例えば、本番当日の天気が朝からどんよりとした曇り空であったなら、何もせずにそのまま放っておいたら、夕刻の本番開始時には、空の色のようなどんよりした演奏になってしまうものなのだと私は捉えている。

だから、とりわけ本番当日のテンションの保ち方には気を遣う。自分自身のコンディションはある程度コントロールできるものだが、やはり何と言っても、合唱団全体としてのテンションについては特別だ。

朝イチからテンションを高くしては、本番までもたないだろうし、事前に行われるステージ練習じゅう、ずっとテンション低めでも、よくないだろうし。ギャグをかましたり与太話で笑わせて、リラックスしたムードを作るのも良いが、それがダラダラしたものに転化していってもらっては困る。

皆さんは、「所詮人間は感情の動物であるし、さもありなん」と、もしかしたら今回の話に納得されてしまうかも知れない。

しかし、本エントリで私が言いたいのは、だからこそ、逆に空気をコントロールしてしかるべきだということなのである。

また、本番当日に行われるイベントが、そういった空気や雰囲気といったものを変えていくきっかけとなる場合もある。

例えば、集合直後の点呼で、団員が返す返事の仕方や、全員で行う体操での声の出し方など、些細な事象でテンションが高まることがある。それと、普段はおとなしい団員の気合がいつもと違うことを肌で感じられたりすると、きわめて自然に、自らの気持ちに伝播して一緒に高揚してゆくことが多い。これらは、皆さんにも心当たりがあるのではないだろうか。

(「その2」に続く・・・)

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あれから10年が・・・(その4)

 合唱組織論, 日記・コラム・つぶやき, 特集  あれから10年が・・・(その4) はコメントを受け付けていません
11月 032013
 

(その1)
(その2)
(その3)からの続き

1994年(平成6年)当時の団長と、団員のA、そしてこの私・・・、時を同じくして役者が揃い、前橋男声合唱団への再興へ踏み出すことになるが、なんといっても決定的な推進力に欠けていた。それは音楽的な責任者たる指揮者の存在である。

当時の団長は、確かに学生時代に学生指揮者を務めたこともあって、指揮の腕に覚えがあり、団内の技術的な事柄には絶対的な発言力を持っていた。だが、さすがに、自らの武器である歌唱力を表に出すためには二足の草鞋は履けぬ。そこで、その頃、都内から群馬県内に活動の場を移しつつあった新進の中曽根敦子氏に、指揮者の白羽の矢を立てたわけだが、当時の団長の中でのこの矛盾はこのまま温存され、将来、団を揺るがす事件の内因の一つとして地下深く潜行することとなるのだ。

それはともかく・・・、まずは、彼女には音取りのためのピアニストという名目で練習に来ていただき、団内の世論を醸成した後に、改めて指揮者として就任していただくというプログラムが、我々の中で合意されたのであった。かくして、1994年(平成6年)秋、中曽根女史の常任指揮者就任が決定される。

同時に、ある目的のもと、マネジメント責任者が役職として新設され、学生時代に少々であるが合唱団運営の実績があることや、これまでの再興への動きが評価されてかどうかはさだかではないが、この私が全会一致で推薦され、団の運営(というよりは雑務)担当者の役を引き受けることとなったのだ。この時に感じたある種の昂揚はいまだ記憶に新しいところがあるが、同時に、今後越えなければならない様々な難題の数々に打ち震えるほどのものであった。

そして、ある目的とは、とりもなおさず「初の定期演奏会開催」のことであり、その実現のためであれば、少々の荒療治も厭わずと、私は就任直後から、やや急進的な改革に着手してゆくのだった。翌1995年(平成7年)になって、喫緊の課題とされていた次の三項目について、具体的なアプローチがなされ、実施に移された。

 1.団規約の制定
 2.新規団員の外部からの募集
 3.パートの再編成

こうして、いったんしぼみかけた県内初の本格的男声合唱団構想も、めでたくここに再び胎動を始めることとなるのだが、前述したキーマンの3人の同床異夢もまたお互いに乖離したものとなってゆく。

(その5)につづく

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6月 292013
 

今月初めにサッカーワールドカップ最終予選オーストラリア戦が戦われました。その翌日、本田圭佑選手の会見での発言が巷で話題になっていました。

W杯本選出場で笑顔でやや浮かれ気味の他の選手に比べ、神妙な面持ちの本田選手がかえって目を引いたということもありますが、やはり、注目すべきは実際のその発言の中身でしょう。

日本の長所はチームワークだが、それは生まれながらに備わっている、あるいは成長していく過程で養われる土壌がある。だから、磨かなければならないのは「個」の力。どうやって自立した選手になって個を高められるか・・・。

セリフは完全一致しませんけど、本田選手は概ねこのような趣旨の発言をしています。

合唱もチームワークが肝心であることは論を待たないところですが、「個」の力については、意見が分かれるところかも知れません。

確かに、個人の技術や力量によって、秀でた人物が合唱団やパートの声の核になることは大いにあり得ますが、この場合、その人物がかなり注意深く自らをコントロールしながら、合唱団もしくはパート全体に対して自らの声を融合させるという、この一点において技術的に優れているか、もしくは大きな努力を払っている前提があるように思えます。

しかしながら、以前にも述べましたが、某コーラスユニットのように、個人的な力量に優れているだけで、声の融合ということに重きを置かないグループなどでは、今回の本田選手の発言は、合唱にも適用できるものとして共感したかも知れません。

現実はといえば、所詮は私の経験上の話にしかならないのですが、やはり、「個」の力は均質なアンサンブルを指向したときに、効果を減殺する方向にしか働かないという見解を持っています。

個人的に頑張れば頑張るほど、合唱全体の足を引っ張ってしまうという失敗例など、おそらく冷静に過去の演奏録音を聴き直せば、掃いて捨てるほど見つかるような気がします。(苦笑)

皆さんはいかがお考えですか?

ただし、もちろんこれは、本田選手の発言の真意が、サッカーの試合経過のせめぎ合いの中で、最終的に明暗を分けるのが、「個」の力の差なのだ!という意味である前提に立っておりますことを、念のため付け加えておきます。

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あれから10年が・・・(その3)

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6月 042013
 

(その1)
(その2)からの続き

さて、1993年(平成5年)になって、前橋男声合唱団の活動はすっかり影をひそめてしまった。今振り返れば、この年の6月に群馬県合唱祭に団として参加したことが、この年における唯一の行動記録ではなかったか。しかし、この時を最後に前橋男声は、これ以上の低迷状態に再び陥ることはなかったのだ。先述した2001年の危機後も、決して活動が止むことはなかったのだから。

さて、そのまま翌1994年となり(平成6年)となる。その4月、1991年(平成3年)入団組だった私と団員Aが相次いで職場が転勤となり、前橋の本店に異動してきたのだ。今思えば、これが一つの転機であった。仕事にも慣れ始めたことで余裕も生まれ、新たな生活に潤いを求めていたからだろうか、当時の我々は俄然、合唱に力を入れ始める。

Aは、W大のア・カペラサークル出身で、当時の単語で「ドゥワップ系」を志向していた。また、その頃、新たなメンバーを求めて群馬でのグループ結成を目論んでおり、その人的資産としての価値を前橋男声合唱団に見出していた。
私もその候補の一人となって、様々な機会で歌声を共にすることが多く、お互い、自らに足りないものを相手が持つことを感じ、さながら好敵手として良好な関係を築いていたわけである。

Aは、演奏効果や発声法の違い等の理由から、若干男声合唱からは距離を置いていたが、それは私がア・カペラに距離を置くのと同様であり、Aがア・カペラ・グループ立ち上げに奔走するのを私が助けるのと引き換えに、私が前橋男声合唱団の再建に本腰を入れようとし始めている時に、力を貸してくれたのはAだったのだ。私の中には、学生時代に見出した男声合唱の愉しみを、継続して追求していく気持ちが強かったが、しかし、学生時代とは異なるものを創造していきたいという、漠としたものを心に抱いており、ア・カペラは、一つの選択肢になり得たのだ。

話を元に戻すが、当時の団長は、団運営に関し、まさに「匙を投げた」(本人談)状況であり、男声合唱との関わりといえば、母校の音楽部を指導する程度であったろう。しかし一方で、彼にも大きな転機が訪れる。彼の本業は実業家であり、創業者である父親のもとで、副社長として仕えていて、将来の禅譲はほぼ保障されていたはずであるが、その地ならしのため、かなりの多忙を極めていたのである。

この時の前橋男声合唱団の衰退は、当時の団長が多忙につき、合唱活動に割ける時間を徐々に減らしていたトレンドと実は符合している。しかし、この平成6年過ぎ、晴れて社長職を譲り受けることとなり、急な仕事以外は部下に任せる余裕も生まれつつあったのだ。

こうして、1994年(平成6年)、団員Aと私が時を同じくして、合唱に力を入れ始め、前橋男声に戻ってきた。そこに、当時の団長が賛同、合流したという形であったが、ともかく、前橋男声合唱団の再興の準備が整いつつあったのである。

(「その4」へつづく)

関連記事
(その1)
(その2)

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