2月 112021
 

(その1)からの続き

1.県の2つの意思決定のうち、正当なのはどちらか

ここ数年で、県では「あり方検討部会」「見直し委員会」、相反したふたつの方針が相次いで出された形だが、その組織論的な重みから見た結論の正当性について触れてみたい。

ご存知のとおり、先に条件付き存続の結論を出していた旧政権の「あり方検討部会」の担当は文化行政部局であり、新政権の「見直し委員会」は行財政改革を所管する総務部局の担当である。建前としては、県の施策の方向性を出す際は関係部局合議の上、知事の裁可を仰ぐ形となるのが通常の意思決定過程であり、「あり方検討委員会」の出した方向性が前知事の決裁を受けて意思決定されていたはずである。

しかし、政権交替後、新知事の意向に沿って総務部局が案を練り上げているはずなので、このちゃぶ台返しは既定路線でもあったろう。また、前述のとおり、ちゃぶ台返しは、行政の継続性を云々してみたところで、むしろ通例であるし、直近の民意を得た新政権の強みもあり、その正当性は補強される方向に働くのだろう。

個人的には、前政権の「あり方検討部会」は群馬県文化基本条例をはじめとした法令に則り設置された検討機関で、メンバーや議事録も開示済みであるのに対し、「見直し委員会」は県内部における任意の検討組織にとどまり、構成員や検討プロセスも非公表であるなどブラックボックス化しており、現時点では、その重みの印象に差を感じざるを得ないのが正直なところ。

ただし、それを差し引いても、県の出した2つの結論のうち、「見直し委員会」の出した最新の廃止検討路線が最終的な正当性を保持するものとみて差し支えないだろう。

2.県の文化行政ビジョンの提示がセットであるべき

二つ目は、県としての文化行政、特に文化施設への考え方が見えてこないということ。言うまでもなく県民会館は県管理の文化施設であり、一義的には県の立案する文化施設の配置計画により設置されるべきもの。

昨秋「見直し委員会」が中間報告の中で廃止の方向性を提示したが、その必要性については、既存の市町村営施設で代替可能であるような書きぶりなのだ。「見直し委員会」委員からは、Gメッセや高崎芸術劇場が役割を担えるなどというコメントも掲載されており、まるで、県が文化行政への責務から撤退するかのような印象さえ受ける。

では、既存の文化施設配置計画ではどのように方針が示されているのか。群馬県の文化行政の方向性を示す現行の第2次文化振興指針(平成30年〜34年までの五カ年計画=「あり方検討部会」設置と同様、前政権下で立案・実施されたもの)の中から県民会館への該当部分を引用する。
https://www.pref.gunma.jp/03/c42g_00060.html


「群馬県民会館」
県域的・広域的な文化事業、伝統芸能の継承や担い手の育成などの中核的な施設で、2,000 席級の大ホール、充実した舞台設備を備えています。開館以来46 年経過していることから、耐震対策と座席の改善など、県民目線での改修を進めます。(大規模改修工事を平成 32 年度~平成 33 年度に予定。)


「見直し委員会」の打ち出す廃止の方向性とは正反対の指針であり、現時点で、県の施策として整合性がとれていない。ただ、もし県が本気で県民会館を廃止する積もりであれば、本指針も改定への手続きが着手されているであろう。(今後も注視して参りたい。)

さて、指針に記述のとおり、県民会館は県域的・広域的な文化事業を実施すべき県有施設であり、県内唯一無二の大規模多目的文化施設である。ただし、広域的見地から設置された施設である事も忘れてはなるまい。県が市町村を越える広域行政を担うのは地方自治法に定められたとおりであり、文化行政も然りだからだ。

また、県庁所在地である前橋市は、群馬県のほぼ中央に位置し、県内のあらゆる市町村から、例えば自動車利用なら最大1時間半程度(高速道路利用)で等しく到達できるロケーションだ。こういった地理的特性のもと、広域的文化施設の位置づけを得て、県都前橋に「群馬県民会館」は晴れて設置されたのだろう。

しかし、その後、市町村単位で良質の文化施設が次々と建設されるに至り、県民会館に行かなければ接することが出来なかったはずの程度の良い文化事業というものを、遠く前橋まで出掛けずとも、おらが町のホールで十二分に堪能できる時代を迎えたのである。高速交通網や主要幹線道路が整備され、市町村営の施設へマイカーを乗り付けて難なく訪れることが可能となり、県民が手にした多くの選択肢の中から、いつでも文化事業の恩恵に預かることが出来る時代となっていった。

その間、音響技術は進歩し、一方で高齢化社会が到来するなど県民の価値観も徐々に変化を遂げる。耳の肥えた客層を満足させ、弱者にも配慮することが求められる社会へと時代は大きく変化した。元々多目的性格が強いホールのため、残響効果には秀でず、段差の多い構造からバリアフリー対策は不十分とならざるを得ず、耐震的にも不安を残した県民会館は少しずつ時代から取り残され、その価値は相対的に低下していったと思われる。

ただ、高崎の群馬音楽センターと並んで県内双璧である2000人超のキャパシティは興行側からは魅力であったのだろう。有名アーティストによる大型コンサートツアーの群馬公演と言えば、前橋か高崎というのがお決まりの時代もあったように記憶している。こうして、学校のコンクール等、シンボルとしての県都開催を必要とする一部のイベントを除いて、県民会館においてこそ!といった個性は徐々に薄れていった。つまり、県民会館は50年をかけ、ゆっくりと『前橋ローカル化』していったのではなかったか。

そうした中、このたび県民会館廃止が提起され、前述したように在前橋の文化団体を中心に存続を求める声が上がっているが、気掛かりなのは県の広域文化行政に対する今後のビジョンが不明確であり、これが混乱に拍車をかけているように思えてならないことだ。早急に、県は広域文化行政に対する将来ビジョンを明らかにすべきではないか。市町村営施設に役割の代替を求め、県民会館廃止の方向性を明確にするのであれば、それを補完する政策の立案、これはセットであるべきなのだ。

例えば、仮に市町村営の文化施設に代替を求めるのであれば、そこには課題も幾つか待ち受けている。

一番なのは、市町村営であるだけにそこの市町村民の利用が優先されがちであることだ。それは、施設が市町村民税を原資として運営されていることを考えれば当然のことかも知れないが、現に我々のような「前橋」の看板を背負っている団体は、他市町村営施設への敷居の高さを常日頃から肌で感じている。

市町村外の団体であるならば厳しく団員名簿の提出を求められ、メンバーの住所が査定され、当該市町村民が過半に達していないと利用が拒否されることも実際あるのだ。中には利用料金を30%割り増す施設もあるなど、よその文化団体を排除をしても、共に育てようという広域的見地は、市町村内では今日までほとんど育っていないと言っても過言ではないだろう。

特に、我々前橋男声合唱団は、活動拠点が前橋という意味で「前橋」の冠を付けてはいるけれど、確かに設立当初は前橋市民がたまたま多数を占めていた。けれど今や県内外からメンバーが集まり、事実上広域の文化団体となっている。道路が整備され、移動に不自由を感じなくなった昨今、これは当団だけの例外ではなく、文化活動はますます広域化してきている。検証データを提示することは今できないが、合唱団にせよオケにせよ、一市町村内でメンバーが完結する団体など、ごく少数に限られるのではないか。

二番目には、本当に市町村が広域行政の一端を担うとなれば、これに対する応分の負担を、県に求めても良いのではないかという、県の財政的支援の課題も浮上するのではないか。文化振興に係る県の責務や努力義務について、県はどう考えているのだろうか。

ともかく、もし、県が広域文化行政への関与を弱め、市町村施設への代替化を進めるのであれば、これらの課題を解決するため、すき間を補完するソフト施策の提示が不可欠であると私は主張したいのだ。これが「見直し委員会」の出した方向性の論拠である豊富な市町村営施設への代替化案が、浅慮であると考える所以である。

(そもそも、県民会館イベントのGメッセへの代替が可能と思っている人間が「見直し委員会」に委員として居ること自体、適性を疑うし、その拙いコメントを中間報告書の中に出してしまう県も情けない。)

(その3)では、私見ながらも県民会館の今後の見通しや演奏者としての小団の思いを述べてみたい。

 


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 Posted by at 20:43

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