第58回東西四大学合唱演奏会(その1)

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久しぶりに、標記演奏会を訪れた。演奏会場は、東急三軒茶屋駅下車、相変わらずの昭和女子大学人見記念講堂。

私の学生時代は、この演奏会は東京文化会館でというのが定番であったが、 もうかれこれ15年もの間、関東での演奏会場はここである。(除:2003年)

私は群馬に住まいを構えている都合上、かつては断然、上野の文化会館はアクセスが良かったものだが、 最近は「人見は遠いナァ」という嘆きも、「湘南新宿ライナー」のおかげで昔日のこととなった。

さて、例によって、演奏会は各校によるエール交換で幕を開ける。 新年度における各校の実力のほど(特に関西の二校)が、「ほぼ」計測できる最初の機会となるわけだ。

一通り聴いて気になったのは全般的に、発声が浅くなっていること。(人数が比較的多い早稲田も然り) 既に、トレンドとしては、80年代後半あたりからの傾向であることは肌身で感じていたが、 久々に訪れて、ここまで浅くなっていることに、驚きを禁じ得なかった。

慶應ワグネルなど、エールの調性を下げて歌ってなかった?(ご存じでしたら誰かコメント願います)確か、原譜はC-Durだったはずだけど、そうは聞こえなかったんですわ。 私は絶対音感ないので、イマイチ自信はないのですけどねぇ・・・。

第1ステージ 男声合唱組曲「柳河風俗詩」 慶應義塾ワグネル・ソサイエティ男声合唱団
(作詩:北原白秋 作曲:多田武彦 指揮:畑中良輔)

26人ばかりのワグネル。 100人近くで、富士山とかファウストの劫罰なんぞを、 てめぇーら聴けっ!ってな感じで歌っていたあのワグネルである。 曲はご存じ、男声合唱では超スタンダードな一曲。

緞帳が上がると、近年歩行が困難になりつつあるように見受けられる畑中良輔氏とともに、たくましい体躯に、白い口髭を蓄えた初老の男性が現れた。 どうやら、作詩者北原白秋の著作「わが生ひたち」からの一節を、演奏に先駆け朗読するために、 芸大名誉教授であり、俳優でもあるというその御大を起用したようだ。

朗読後の演奏は淡々と進むも、Bass系に声の硬さが目立ち、全体のバランスも良くない。畑中氏が多田武彦作品でもってワグネルを振るケースは決して少なくないが、 大変失礼ながら、いずれも、消化不良に感じられることが多かったことを記憶している。

この人数で、しかもエールで聴いたあの発声で構成される合唱では、 私の想定以上の瞬間は、残念ながら一刹那の欠片ほども訪れることがなかったのは、 ある意味、仕方ないところであろう。

このステージの演出での狙いが何か、今一つつかみきれないところがあるが、折角曲目解説中に、 「柳川は青年白秋にとって帰るに帰れぬ禁忌の地であり、 それゆえに却って美しく幻視される産土であった」と記すのであるなら、 この程度の朗読に依らずに、演奏そのものでメッセージとして表現して欲しかったと失望を禁じ得ない。

また、終曲「梅雨の晴れ間」では、曲の一部を改変(小節を付加)して演奏したり、一曲目の「柳河」でソリストが歌詩を取り違えたのは故意ではないだろうけど、 たとえ、作曲者に了解済みといえども、何をやっても良いのかと、私は大変疑問に思ったし、 聴き手としては出鼻で興醒めしたステージを聴かされ、たいへん残念であった。(初めて聴いた方は、そういう曲として受け容れたかも知れないが・・・)

第2ステージ 「北欧の風景」 同志社グリークラブ
(作曲:マデトヤ他 指揮:伊東恵司)

伊東氏といえば、最近、各方面の合唱のステージで見かける指揮者である。私も、過去に数回、聴かせていただいている。 しかも、北欧系のテキストを精力的に取り上げているようだ。

伊東氏は、客席から後ろ姿を眺めるに、なかなか端正な指揮っぷりである。 だが、音楽に何か大きな物足りなさをいつも感じてしまう・・・それは何なのか。

思うに、後ろ姿と同様、音楽が端正なのだが、面白さに欠けるというか・・・。 中でも問題に感じられたのは、これらの曲の持つ、民俗的な部分や人間臭い魅力を、 指揮者が引き出せていないところだろうか。

テナーが終始、平坦な発声であったのは残念であった。 こうなると当然、音楽のレンジ幅も狭くなり、表現幅は制限されざるを得ない。 未熟な22人のグリーメン達の歌に対する熱意には素晴らしいものがあるが、 指揮者の力量に疑問符を付けざるを得ず、勿体ないステージであったと思う。

(つづく)

 

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コメント

  1. tak16 より:

    ワグネルが26人というのは?ですが、たぶん1年生が出ていないんでしょう?それでも少ないと思いますが。

  2. Tetsu より:

    tak16様、コメントをありがとうございます。
    ご賢察のとおり、ワグネルの26人というのは、一年生を含めない人数です。
    参考に、四校の中で、唯一、一年生をオンステさせていたのは、関学だけのようです。

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