早稲田大学グリークラブ創立100周年記念演奏会(その1)

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◆日時 2008年11月22日(土)16時45分開場、17時半開演

◆場所 サントリーホール大ホール

◆プログラム
〜オープンニング・ステージ〜 指揮;佐藤 拓 “Hototogisu”(委嘱初演)  作曲;ヨーナス・タムリオーニス
〜第1ステージ「北斗の歌声、未来への架橋」〜 指揮;松原千振 Sop;竹内葉子 pf;岩瀬 彩
       ”Hymne”(賛歌) 作曲;シベリウス
       ”Helletsused”(幼き日の思い出) 作曲;トルミス
       ”Bridge Over Troubled Water”  作曲;ポール・サイモン 編曲;ホーカン・スント

〜第2ステージ 男声合唱とピアノのための「縄文」〜 指揮;荻久保和明 pf;前田勝則
       1.透明 2.曙 3.行進 4.波の墓 
       作曲;荻久保和明 作詩;宗 左近

〜第3ステージ 100周年記念ステージ〜 総合司会;柿沼 郭(NHKアアナウンサー)
       1.最上川舟歌 2.ふるさと 3.なごり雪 4.音楽(委嘱初演) 5.帆船の子(委嘱初演) 6.島唄 
       7.遙かな友に 8.この道を行く 9.早稲田大学校歌

我々前橋男声合唱団は来年で創立20周年であるが、この伝統あるグリークラブは創立100周年を迎え、その記念演奏会を聴きに行ってきた。

筆者は16時半に現着。既に100人以上の客が並んでいる。 この時点で、この演奏会の盛会は約束されたものだったのかも知れない。

キャッチフレーズは、『「次」の100年、始めています』

そして、プログラム中には、100周年を記念してか委嘱初演作品がラインナップされている模様。 パンフ末尾掲載のメンバーリストには、何と185名! 老壮青全ての世代が取り揃えてご用意いたしました、という感じ。 しかし、昭和60年〜平成一桁卒団の年代(現30代後半〜50才)の参加率は著しく低いのが目を引く。

プログラムは全4ステージ中、北欧物が二つ。 このうちの一つで、オープニング・ステージとして配された、”Hototogisu”という曲。 リトアニア人作曲家のタムリオーニスが、今回の記念に献呈したものだという。

「めづらしき 声ならなくに ほととぎす ここらの年を 飽かずもあるかな」 という、古今和歌集の中の一首に曲をつけたもの。 現代における世界合唱の重心の一つに北欧が挙げられるが、その流れの中で新たな試みとなった。

指揮の佐藤氏は20代後半ながら、このテキストの深遠さに怯むことなく対峙し、 合唱団を無難に統率した。 柔らかなベース系の響きと、決して力業に走らないテナー系。 80年代後半の早稲田グリーを知る筆者にとっては意外な展開。

時には平行5度や8度と虚ろながらも荒々しく、 更には7th、9thといったジャジーな匂いも漂わせながら、 年輩のOBには、きっと親近感の薄いだろうそういう音形や和音を粘り強く表現していた。

続く第1ステージは「北斗の歌声、未来への架橋」。 指揮は、北欧及びバルト諸国で実績を蓄積し、日本国内ではフィン・ウゴル音楽の第一人者として定評のある松原千振氏。 早稲グリとの接点は、過去の定演などで既に何回かあったようだ。

小曲はシベリウスと、トルミス、そして何故かポール・サイモン。 北欧の曲はよく難解だといわれる。 客の反応を観察しても、曲の良さがあまり伝わっていないように感じた。

元々、シベリウスの枯淡な色というものは、指揮者や演奏家にとっても、 少々手こずるだろうことは理解できるが、少なくとも、歌いたがりのグリーメン達を前にして、 孤高さや玲瓏さというものを上手に引き出せないようでは、第一人者の名が泣くのではと思えた次第。

トルミスはまずまずの好演。 時折、西欧への憧憬か、ロマン派の曲調を帯びたかと思うと、再び北欧独特の民族的(民俗的?)な調子に回帰してゆくという、豊かなニュアンスを含んだ名曲。

ソプラノ歌手(筆者はアルトだと思っていた)との掛け合いは聴き応えがあったが、 サントリーホールの特色なのか、響きが散逸してしまうようで、 合唱に負けてしまっていた印象が強い。 スマートさは際だっていたが、もっと野性味剥き出しで歌っても良かった気がする。

終曲の「明日に架ける橋」は、ご存じポール・サイモンによって一世を風靡した一曲。編曲者が北欧人だというのが唯一の北欧つながりの要素。 確かに、次の新たな一世紀に向けて送るエールという意味合いでの選曲であったろうが、 ピアニストはテクニックは抜群で良い音を出しつつも、合唱に寄り添う気持ちが希薄。 演奏上も、明らかに齟齬を生じた場面があり、若干顔をしかめた。

指揮とピアノ、そしてグリーメン達の間の有機的結合度が浅いと感じられたステージであった。
(つづく)

 

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