発声について思うこと

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最近、発声について懸念することがある。それは、発声練習の時間への参加率の低さである。 年度末と年度初めの多忙も重なる中、普段から仕事に飛び回る団員諸兄にとって、 過酷な要求であることは重々承知の上で敢えて記す。

発声を磨かなければ明日はない。

前橋男声合唱団は、特定の大学や高校のOB合唱団ではないから、 発声技術について常に改革しようとする気概を持ち続けることが、 少なくとも、現在の中曽根指揮者のもとでは、必要であると感じている。 特に経験者にそれが求められることは論を待たない。

もちろん、仮にどこぞのOB合唱団であれば、 かつて同じ釜の飯を食った仲間たちと、久しぶりに歌う機会を得ても、 過去の共有時間の膨大さという財産のもとに、固有のトーンを演奏中に匂わせることが可能だろう。 (ただ、真の意味で合わせるとなると、当然相当な困難が伴うだろう)

だから、OB合唱団が発声の改革を志向することで、 却ってその固有のトーンらしきものを乱すことにつながると本能的に考えるのだろうか、 声自慢とか、声の張り合いとか、とにかく声そのものか、声を出すこと自体に重心をおきがちで、 発声技術の改革やら向上というものに、さして関心を払わないところが多いように感じる。

とはいえ、大変厄介なことに、発声練習に毎回参加したからといって、 すぐに個人的な歌唱力がアップするとか、合唱団としてのアンサンブル力に違いが出るとか、 必ずしも技術的な上達が約束されるわけでもなく、 ともすると、まことに退屈で、場合によっては自分の非力さを思い知る時間でもあるのだ。

ただ、団員個人が退屈かどうかは、団員それぞれの持つ価値観や、発声指導者の資質や話術、問題把握力などに大きな相関があり、本質的な問題ではない。 むしろ、その時間を忌避して、アンサンブルの時間だけで適当に過ごせれば良いと考えてしまうのも、 人間の自己防衛的な生理反応としては、ごくごく自然な現象であるのかも知れない。

しかし、敢えて発声練習の時間を忌避するならば、それは長期的に見て、 個人としては無論であるが、団としても大きな損害であるということを強く指摘しておきたい。

言葉は悪いが、「損害」は紛れもない客観的事実である。 なぜなら、素人集団の合唱では、共有時間の最大化こそが、団存続の唯一の命脈であるからだ。

確かに、前橋男声の合唱を初めて聴くとき、合唱経験者ならば、 かつての学生時代のトーンの匂いをきっと感知するだろう。 ある人はそれを「郷愁」と呼ぶかも知れない。

それを匂わせているものの、この前橋男声合唱団の練習の方向は、 かつての学生時代の発声を穏健的ながらも全否定するものに他ならぬ。

全国に数多存在するOB合唱団では、世代の断絶が少なからずあるといわれる。 40代以下の大多数が参加しないという現象に見舞われているOB合唱団は実に多い。 総じてこの年代は働き盛りであるから参加が不可能であるという傾向は否めないが、 若手だけのOB合唱団が別に結成されて活動しているケースもままあり、そうも言い切れないと思う。

声楽的な進歩を放棄し、枯れ始めた声のOB合唱団で、かつての先輩連中がOB風を吹かしていては、 既製のOB合唱団に未来を感じられずに、これを避けたくなる心情は確かに理解できるところだ。

しかし、単に比較的若々しい声そのものだけに依拠している限り、 その若手OB合唱団にも明日はないと知るべきだ。 暫くは遺産を食いつぶすことで凌ぐことは可能だろうが、数年も経てば因果応報、 今度は更に新しい若手から避けられ始め、同じ道を辿ることは想像に難くない。

要は、団として発声の改革を持続的に志向できるか・・・。 このことである。

OB合唱団にせよ、我々のような雑多な人種が集まる一般男声合唱団にせよ、 これを克服できない限り、短期的には栄えているように見えても、衰亡は必然なのだろう。少なくとも、私はそう考えている。

発声練習から共有時間の最大化を何ゆえ求めるのか。 練習開始時刻に集まるべしという、体育会系よろしく、ただ闇雲に勤勉さを求めるような、 皮相的なものでは決してない、「思想」に裏打ちされたもの・・・ 今回のエントリで、その一端をご理解いただければこれ以上のことはない。

前橋男声合唱団の、地味であるが遠大なこの試みが一炊の夢と終わるか否か。 結局その鍵は、団員の胸三寸にある。 一団員がいくら広長舌をふるっても、こればかりは如何ともしがたい。

だが、私は立ち向かうだろう。それこそが私の生き様なのであるから。 すべては、団員総意のままに。 私もそれと運命を共にする所存である。

 

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