発声について

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前橋男声合唱団では、毎回3時間の練習のうち、約1時間を発声練習に費やしている。発声練習とは、合唱団員にとっての「朝のラジオ体操」のようなもの……いや、少し違う。これは単なるルーティンではなく、芸術表現のための声を鍛え、磨き上げる、合唱における肝心の工程なのである。

とはいえ、世間では「合唱=声が上手ければいい」と考える人が少なくない。そして、日々の練習でそれがなんとなく実践されると……まあ、首をかしげたくなるのも無理はない。

そもそも「合唱」とは文字通り「合(あ)わせて唱(うた)う」ことだ。この「合」と「唱」、両方にしっかりとした技術論があって然るべきではないかと思う。

私が考えるに、合唱で高みを目指すために身につけるべき能力は、大きく分けて2つに集約される。

  1. 声楽的に自在に音を表現する力

  2. 演奏の瞬間瞬間を聴き取り、臨機応変に修正する力

簡単に言えば、1は「唱」のテクニック、2は「合」のテクニックだ。具体的に言うと、1は声楽そのものの技術であり、2は「この音が少しずれたな、ではどう補正するか」を瞬時に判断する能力である。

つまり、我々が毎回汗だくになって行う発声練習は、1に属する。合唱で必要な能力のほんの一部に過ぎないのだ。だからこそ、2にももっと目を向ける必要がある。

例えば、ある人“A”が並外れた声の持ち主だとする。もしこの人に2の能力がなければ、ハーモニーはあっという間に崩れ、団全体が迷惑する。声量のある人ほど影響力は大きく、知らず知らずのうちに団の空気を乱すことになる。ソリストとしては天才でも、合唱団員としてはちょっと……というパターンである。

そして恐ろしいことに、1と2は完全に独立したものではない。2の能力は、1の基礎がある程度身についていないと活かせないのだ。演奏中に「うわ、音がずれた!」と気づいても、修正する技術がなければ、その瞬間の閃きはまさに「宝の持ち腐れ」。

このため、世の中の合唱団では「声がいい=偉い」という図式に陥りやすく、声の達人がますます増長し、団の環境を悪化させる――なんて話は珍しくない。

もちろん、演奏機会を重ね、修羅場(!?)をくぐれば、2の能力は自然と磨かれる。しかし、それは元々素養のある人の話で、そうでない人はどうするか。現状では、発声練習(1の訓練)が、やっとのことで2を引き出す補助になっているに過ぎない。

私が言いたいのはこうだ。いわゆる発声練習は、声楽的技巧の習得だけで満足してはいけない。2の能力を明確な目的として組み込むべきだということ。つまり、ソリスト向けではなく、合唱向けの総合的な声楽訓練手法が必要なのだ。

もちろん、発声猪突猛進型でも多少の成果はあるだろう。しかし、指導者が意識的に2を鍛えるか否かで、結果は雲泥の差になる。

忙しい社会人合唱団員が効率的に練習するには、1はもちろん、2を鍛える方法も日頃から工夫する必要がある――。私も、これからもその方法を探し続けたいと思っている。

(2025.8.17一部リライト済み)

 

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