合唱エキスパートの欠乏について(その2)

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○諸悪の根元=信じられやすい「良い声・至上主義」

昔 に比べれば、テレビのドラマの主題歌やCM等で、一流といわれる声楽家の声をきくことが多くなった(アルバイトか?)。いわゆる良い声である。

聞いていて 心地よい。素晴らしい声だな、と思う。しかし、それはイコール「歌唱力が優れていること」なのだろうか?? 

もちろん、我々は歌によって何かを伝えたい、表現したいのだ。その道具としての声・・・。これが良い声であることに越したことはない。声をコント ロールし、表現力には幅が出て説得力を持つ声になる。

だからこそ、我々は発声について学び、個人のライフワークほどの長期的な視点で声楽とは何か取り組ん でいるところである。

しかし、私は憂えるのである、近年の合唱演奏そのものが、声の良し悪しに左右されがちな傾向であることを。声が良ければ全て良 し・・・ということなのか。全くもって疑問である。

地方の第九演奏会などで、地元のアマチュア合唱団とタイアップして演奏会を計画したものの、合唱の練習 成果がはかどらず、本番当日になって二●会等から助っ人を招いて一時しのぎをする・・・といった例がまま見受けられる。

今まで練習して来た様々な成果を、 飛び乗りで来た、一部の技術の優れた者達ににより台無しにされることがある。それならそれで、もっと以前からの練習にも二●会ご一行様にお越し願えば良いのに。

嘆かわしいことに、こういうリスクに気がつかない、演奏会マ ネジメント担当者は意外と多いのである。(でも、中には合唱団の母体を損なわないよう、寄り添って歌ってくれる人もいます・・・ん、フォローになってない か・・・汗)

日頃の合唱団の練習の中で、声自体を良くしようとする合唱指揮者の試みは数知れないが、歌唱力向上のためのインスピレーションを与えられる合唱指揮者は数少 ないものである。

「たとえ声が悪くとも、心のこもった演奏を目指したい。」そんなの当たり前じゃん!!とみなおっしゃることだろう。これぞアマチュアリズ ムと胸を張る方もいるだろう。しかし、果たして真の意味でそうだろうか??

みな、指導者側から見れば、今の合唱団の不甲斐なさを慰める言葉として使ってい る場合がほとんどなのではないだろうか?? こういった声の良し悪しのみに目がいってしまうのは、あまりにも近視眼的であり、工夫がなさ過ぎる。

合唱はとにかくハモらせてなんぼであろう。たとえば、声が声楽的でなければ、全パートを志村けんのバ カ殿の声に音色を統一してハモってみるといい。これはハモる。驚くほどハモる!!

たとえば、そういう工夫が創造の一つであり「音楽」へのアプローチであると思う。 

念 のため申し上げるが、声の良さと歌唱力は絶対に別物であるが、それ故にお互い密接に関係するものである。私の学生時代、オーケストラでは何と言ってもカラ ヤンだった。クラシックの大衆化に貢献した実績には特筆すべきものがある。

当時、バーンスタインという指揮者が存命で、この二巨匠がクラシック界を二分し ているように思える時代があった。仲間達と論争したものだが、カラヤンの「外見重視の演奏」対バーンスタインによる「人間臭い演奏」。スポーツのように軽 快に演奏するカラヤン・・・。テクは一流の手兵、ベルリン・フィルを率い、スマートな演奏をこなす。はたまた、人間の持っている目をそむけたくなるほどド ロドロしたところまで表現し尽くす、方やウィーン・フィル・・・。

カラヤンが他界した際は、後任にぜひバーンスタインをと独り念願したものだが、結局、ア バドで決まりだった。・・・こんなどちらが良いなどという不毛な論争でよく夜を明かしたものだが、根っこはこの対立構図に似ていると思うのである。 

「声 が良ければそれでいいのか??」ともう一度問いたい。そうでないと、声が良いだけで、ろくに歌唱力のない人間がますます増長していく。得てして、こういっ た人種には発声練習ではよく声が聞こえるが、ソロで歌わせてみるとさほど上手くない・・・、こういう人間が多かったりするのだ・・・。

現に自分のことを 「歌い屋」などと称し、自己満足だけのために複数の名だたる合唱団に掛け持ちで所属し、結局はどこの合唱団でもモノになっていない人間を何人も私は知って いる。唯一、こういう類の人間は願い下げであります。(笑)

やがて、そういう人間が合唱団にはびこることにより、良質な合唱愛好者を駆逐していき(・・・ というか、良質な側が敬遠して去っていき)、「合唱を深めるという意味での楽しみ」を享受しようとする環境は歪められ、悪循環に陥っていくのだ。

そしてそ の果ては、聴衆の心を打つ演奏というものまでも駆逐されていくことになるのである。

 

 

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