再び音取りについて(その2)

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その昔、小団で、あるメンバーが全く音がとれずに、ほとほと困ったことがある。音形の上下に合わせて、彼の出す音は一応同じ方向に上下しているから、いわゆる典型的な「音痴」ではないのだ。

1音とか1音半とか、正解の音から微妙にズレてしまう彼の音。なかなか理解できなかった。

万策尽き、困り果てていた私は、同じパートメロディを私が歌って吹き込んだテープを、ある日彼に渡した。

そうしたら、その日以後テープを繰り返し繰り返し聴いたらしい彼は、めきめきと音を自分のものにして、正確に歌えるようになったのだ。(とはいえ、私の歌唱上の欠点をも真似ていたのだが・・・汗)

どうやら、彼はピアノ等の楽器のように、無機的(に聞こえたのだろうねぇ)な音では、音取りが出来ず、もっと人間的な根源的な触れあいによってのみ音がとれたのだ。

これには瞠目した。そう、それは母親の歌に合わせて口を動かす幼児のような・・・。

音取りの方法は、限られたものではなく、その人のタイプに合ったものがある場合もあるということである。

さて、前回の続きだが、表題の話。

当然、団を構成するメンバーが、どのような音楽的素養を持っているかで、音取りの手法は選択されなければならないが、小団の場合、絶対音感を持つ人間がほとんどいない(というか未確認)から、『移動ド唱法』が適当であると考えている。

まぁ、「固定ド唱法」との優劣については、さんざ議論されていることだが、どのみち一長一短であるしねぇ。

従来、前橋男声合唱団では、合唱における歌詩と音の不可分性に鑑み、中でも外国語曲の音取りにあたっては、便宜上の措置として、「A」音、「La」音及び「Ma」音等を使用して譜読みを行ってきた。

しかし、次期レパである「チャイコフスキー歌曲集」の音取りにあたり、今後、長期的なソルフェージュ能力を涵養するため、下記について試行したいと思っている。

 1.原則、全員が移動ド唱法による音取りを実施することしかるに、これを正確に体得した後に歌詩付けを行うこと

 

 2.上記唱法による譜読みを鉛筆等で、事前に楽譜に移動ド音階を記入しておくこと(読唱できない方のみ)

  →楽譜の冒頭にある調性を示す記号(シャープまたはフラット記号)が幾つか並んでいますが、このうち、一番右側にある記号に着目し、

    ・その記号がシャープであれば、その位置の音階を「シ」

    ・その記号がフラットであれば、その位置の音階を「ファ」

  で読み替えるというわけだ。 

 3.転調等により、移動ド唱法が完全に適用できない場合は、更に一部読み替えで対応のこと

なお、ソルフェージュ能力とは、一般に次のことを意味するが、移動ド唱法は、特にA.及びC.の強化を図るもの。

A.読譜力
 楽譜を読んで音をイメージし表現する力
B.聴音力
 音を聴いて、楽譜に記すことができる力
C.音楽理論
 音楽理論と実際の音の関係を理解する

もちろん、ソルフェージュ力の向上自体が目的ではなく、あくまでも合唱を深めるための一手段。

従来の聞き覚えだけでは、限界があるだろうし、多大な時間を浪費する。むしろ、ソルフェージュに無頓着であればあるほど、音取りの効率はますます低下してゆくだろう。

この方法に慣れれば、(そう!所詮は「慣れる」問題なのである!)初見での歌唱も夢ではないと思われる。(正確に言えば、全員は無理だろうから、同唱法をマスターするメンバーが出現するだろうことは想像に難くない)

私には絶対音感はないのだが、今までこの方法で取り組んできたし、特に、音に対する劣等感を持たれている方にはオススメだと自負している。このように、少々の努力で、得られる果実は決して少なくないと思う次第。

C.の楽典に関連して突っ込んだ話になっても、移動ドをマスターしていると、理解も早いものなのである。(簡単な話では、ドで終わる曲が多いとか・・・転調時の解決パターンとか、果ては対位法や和声学にまで・・・)

ともかく、若年層の加入により意気上がる分、その若年層を中心に音楽的基礎を固めることが重要と考えるところである。よって、中年壮年の皆様にも、ぜひこの際奮起いただきたい。

そして、長期的な戦略を持って、団の未来を描いて行ければと強く思っている。

 

 

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コメント

  1. 移動ド

    当団では、これまで音取りは最初から歌詞を付けて行ってきている。約1年後に迫った定期演奏会で演奏する、ある新曲にこれから取り組むのだが、今回敢えて階名読み、そして「移動ド」で音取りをするとのことだ。
    正直、初めは「え!?」と思った。当方が「移動ド」に慣れていないということもあるのだが、たった1年しかない期間で、「遠回り」をする必要があるのだろうか?と疑問に感じたのだ。読者の方の中には、「1年もあるじゃないか。」と感じる方もいらっしゃるだろう。しかし、当団にとっての1年は、ハッキリ言って「短い」!…..

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