特集 指揮者はなぜ必要か

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通常、オーケストラや合唱団が演奏を行う際には指揮者がいる。しかし、小編成の室内合奏団や”HUSH”のようなカルテットには必ずしも専任指揮者を必要としていない。指揮者の役割とは?そして我が団に とっての指揮者とは?そして我々団員の心構えとは?これらの「常識」について掘り下げて考えてみたい。

1.指揮者の仕事

指揮者の仕事はたくさんあるわけだが、だいたい次の 5つに大別できる。

 ●曲の解釈

曲は楽譜のとおり演奏すればいいわけではない。作曲者の意図を理解し、その曲を生かすための様々な工夫が必要である。これは解釈(アナリーゼ)といい、指揮者にとって最も重要な仕事である。

例えば楽 譜に書かれている記号や指示をどのように表現するか、更にその曲のねらいをよりよく表現するために、また指揮者としての独自の表現をどのように追加するか を決める。

テンポ、強弱、音色、音量のバランスなどのコントロールで、曲にはさまざまな個性や生命が吹き込まれるのである。

 ●テンポを決める

曲のテンポは作曲者が楽譜に指定してあるのが 普通だが、それはアレグロ(速く)、モデラート(普通の早さ)、レント(ゆっくり)など大まかな表現なので、具体的にこれを決定しなければならない。

ま た、テンポは決して一定ではなく、フレーズによって微妙に変化する。それによって音楽に生き生きとした表情を与えることになるのである。例えばテンポアッ プは興奮を、テンポダウンは沈静を表すのである。

 ●強弱などの表現

曲の強弱についても作曲者が楽譜にある程度指定 するが、それを具体的にどの程度にするかを決めるのも指揮者の仕事である。全体の強弱やクレッシェンド(だんだん強く)デクレッシェンド(だんだん弱く) を決めたり、ある音にアクセントを与えたり、パートの音量をコントロールする。

このことにより曲全体の雰囲気を大きく変えたり、あるメロディだけを浮き立 たせたりすることができるのである。

 ●気分の高揚、イメージづくり

指揮者はメンバー各人の感性を最大限引き出し最 高の演奏をしなければならない。メンバーにインスピレーションを与えるのも最も重要な仕事の一つである。

それは言葉を使っても良いが演奏中は声を発するこ とができないので、顔や手指、体全体を使って豊かな表現ができなければならない。

 ●アインザッツ

アインザッツとは曲のスタートや休符の後の各 パートの「入り」を指示することである。パート毎の掛け合いが入り組んだ複雑な曲では、この「アインザッツ」が非常に重要となる。

 
2.言葉はいらない!?

指揮をする上で言葉はかえって不便であるという。仮に「強く」とか「弱く」といっても、それはどのような強さなのかわからない。また「楽しく」とか「悲しげに」といっても、それはどのような楽しさなのかど のように悲しいのかわからないのである。

「失恋したように」とか「雪が降り積もるように」と言っても、人によってイメージは大きく異なるわけで、それを説明 しようとして言葉を重ねれば重ねるほど、ますます個人差が大きくなり混乱するのが関の山なのである。

だから極端な話が、練習中の指揮者の言葉などいちいち 楽譜に書き込まなくとも、指揮さえきちんと見ることができれば、相手が外国人指揮者で言葉がわからなくとも大丈夫なのである。

我々は右脳でこれの指示を感受できる。なにせ指揮法はボディ・ランゲージなのだから。

 
3.指揮者の指示の見かた

では、指揮を見る前に、我々の左脳への基礎知識とし て、指示の見かたについてまとめておこう。指揮者が指示するのに使う主な道具は次の4種類である。

   1)タクトを持つ手

   2)もう一方の手

   3)顔の表情

   4)全身の動き

 ●タクトの役割

  【強弱】

タクトの振りを大きくすれば「強く」、小さくすれ ば「弱く」。更に反対の掌を上向ければ「大きく」、下向ければ「小さく」、その指の動かし方で「もっと大きく」、「もっと小さく」などを要求できる。

もち ろんそれに加えて、顔の表情でエキサイトを伝えたり、目を閉じて静寂の表情を伝えたりします。

 【テンポ】

タクトの速さで表現する。テンポアップする ときはタクトをすくい上げるようにしたり、はね上げたり、円を描くようにするのが一般的。

テンポダウンするときはタクトを徐々に遅くす るか、心の中で「1、2、3とー、4とー」と数えるように分割してタクトを振る。また、顔の表情や体の動きもテンポ変化を伝える重要な働きをする。

  【音楽表現】

固い角張った振り方により、緊張感を高める効果 があり、元気よく振ることにより、生き生きとした表現ができる。

また、滑らかな振り方によって穏やかな表現になり、タクトの先をチョコチョコ忙しく動かす ことによって、ふざけた感じやおどけた感じを出すことができる。

 ●タクトを持たない方の手の役割

手を胸に当てれば「もっと考えて」、お腹に当て れば「より深い音を」、指を唇に当てれば「静かに」を意味する。

拳を握れば「もっと迫力を」、その手を更に振り上げれば「決然と」を表す。タクトが主とし て強弱やテンポを指示するのに対し、もう一方の手は表情を与えるのである。

 ●顔の表情

指揮者の顔の表情は非常に重要である。「ドロ ローソ(悲しげに)」の部分で指揮者がにこにこしていたり、「アニマート(生き生きと)」の部分で指揮者が苦虫を噛み潰したような顔をしていればどうしよ うもないわけである。

楽譜には実に様々な表情、発想が記されているし、音楽にはより多くの心の変化、感情の表現が必要になる。指揮者は、それを顔の表情で 実際に表現して伝えなければならないである。

 ●体の動き

指揮者の体の動きは、メンバーに与える視覚的効 果として最も大きなものである。体を前に倒すことによりメンバーの注意を喚起し、音量を抑え注意深い音を作ることを意味する。逆に体を反らせることは強い 音、堂々たる演奏を意味する。

また、体をすくめたり、背伸びをしたり、上体を柔らかに左右に動かしたりすることで基本的な演奏スタイルや気分を伝える。体 を特定のパートの方へ向けることによって「今、あなたが主役ですよ。もっと自信を持って」ということを表す。

4.指揮者の資質とは?

 指揮者の資質は一般には次のようなものだろう。

 ●楽譜が読める

 ●ミスを聴き分けられる

 ●絶対音感を持つ

 ●音楽理論、音楽解釈に精通している

 ●人間的魅力がある

特に「人間的魅力」は重要で、いくらコンピュー タのように知識が豊富で、メトロノーム並に刻むテンポが正確でも、これが欠如していては×である。でもこれらを持っていなくても指揮者になれないことはな い(?)

5.では指揮者がいなければどうか?

小編成の室内合奏団や”HUSH”のようなカルテッ トでは指揮者なしでも演奏は可能である。しかし、オーケストラや10人以上の合唱団ではこれはまず困難である。なぜなら一人一人がメロディを聴きながら合 わせる事ができないからである。

ご存じのとおりステージ上では、以外と他のパートの音が聴きにくいし、一人一人には全体の音量がどのくらいなのか把握しに くい。よって合唱団では指揮者がいないと実質的に演奏が不可能なのである。

 
6.演奏するのは我々

なんだかんだ言っても結局、実際にイメージして演奏 として表現するのは指揮者でなく我々団員なのである。

いくら指揮者が手をかえ品をかえ、団員にインスピレーションを与えても、我々が曲について何もイメー ジしたり考えようとする気がなければ、何も創り出せない。

指揮者と団員の関係を通信における送信と受信とに例えれば、送信技術の向上もさることながら、まず第一に、常に我々団員がその受信感度を上げておかなければ、指揮者の言うことを表現できない、ということになる。

残念なことに自分たちの無気力さや日頃 の怠慢から来る感性の鈍さを棚に上げて、これを指揮者の責任に転嫁して何人もの指揮者の首をすげ替えている合唱団のなんと多いことか!

 
7.我々の心構え

普段の練習の中で、指揮者の言うことをそのまま鵜呑みにしてはいないだろうか?我々は楽譜を与えられて、毎週火曜の夜に漠然と集まって、ただ歌ってはいないか?

音楽的なことはわからないから・・・・と合唱 をしに来てるのに、合唱から顔をそむけるという矛盾した行動をとっていないか。

例えば指揮者の指示に反対して、「いや、俺はこう思う!」と食らいついても良 いのではないだろうか。指揮者は確かに曲を完成させるリーダーシップを執るべきであるが、我々のする合唱は団員みんなで創っていくものである。

音楽という ものは「考える」というより「感じる」ものである。そうすることで合唱という集団芸術における、創造への第一歩になるのではないだろうかと思う。こう言う と指揮者に対し甚だ失礼だが、折角雇ったわけだから最大限に利用して然るべきなのである。

主役はあくまでも我々であり、我々はもっと主張すべきである。言 葉を換えて言うなら「もっと表現すべき」ということなのではないだろうか。この件についてはぜひ団員各位からのご意見を賜りたい。

(参考文献) 高木善之:著 地球大予測2(総合法 令:1996年)

 

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